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KCPの和訳講座:英文和訳のポイント

第10回 試験方法の訳し方

臨床試験や動物試験の報告書や論文を翻訳する際に、必ず遭遇する問題が「試験方法」と「試験の標題」の和訳です。これまで述べてきました様に、翻訳は出来るだけ英文のとおり訳すのが基本ですが、各言語の習慣が異なる場合があります。元の言語の習慣を翻訳する言語の習慣で表現するのも翻訳の仕事です。

まずは、次の英文を訳してみてください。これは英文での典型的な(動物)試験法の記述です。

MacNerman et al. (19XX) exposed groups of eight male and eight female Sprague-Dawley rats to 0-11 ppm (0-11 mg/L) hexavalent chromium (as K2CrO4) for 1 year in drinking water.

この記述の並びは 著者→被験動物→化合物→投与期間→投与経路 となっています。臨床試験でも同様ですが、試験方法では被験対象(動物あるいは人間)、暴露化合物(手技)、投与期間、投与経路の4項目が絶対に含まれなければなりません。

別の試験での英語表現を見てみましょう。いずれもこれらの4項目が含まれています。

 A single dose of glyphosate was given intraperitoneally (i.p) to the animals (Swiss albino mice) at a concentration of 25 and 50 mg/kg b.wt. Animals of positive control group were injected i.p. benzo(a)pyrene (100 mg/kg b.wt., once only), whereas, animals of control (vehicle) group were injected i.p. dimethyl sulfoxide (0.2 mL).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20107585

  For metabolomics, a total of 20 rats (Male Wistar rats) were randomly divided into four groups with five rats in each group, i.e. control, low, middle and high dose group, and housed in metabolism cages. The rats of low, middle and high dose group received a single dose of 5 mg/kg, 10 mg/kg and 20 mg/kg DOX intraperitoneally. The control group received a single dose of the same volume of 0.9% (w/v) saline. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2794350/?tool=pubmed

この4項目はもちろん日本語でも表現されるのですが、その時にある共通性(ルール)が認められます。

  • 化合物:試験法の記述での日本語の共通性は「(化合物)」です。例えば、

                            0〜11ppm (0-11 mg/L)の三価クロムを・・・
                            本物質の粉塵(粒径:18-19 μm) 4.4、15、44 mg/m3 を・・・

            と言う感じで、「〜を」と表現している場合が多いです。
  • 被験対象(動物あるいは人間):日本語の共通性は「(動物種)」です。例えば、


  •                          雌雄Sprague-Dawleyラットに・・・
                             A系列マウスに・・・

            と言う感じで、「〜に」と表現しています。

  • 投与期間:日本語の共通性は「(時間・期間)間、」です。例えば、


  •                          食餌に添加して1年間 、・・・
                             4 時間/日×6 日間/週×24 週間、・・・

                と言う感じで、「〜間、」と表現しています。

  • 文末:日本語の共通性は「暴露させた」あるいは「投与した」です。
  • 投与経路は様々な表現がされていて、「飲料水に添加して」とか「腹腔内注射によって」とか、単に「経口」「吸入」「埋め込み」などとなり、共通の習慣はあまり認められていません。

    以上をまとめますと、動物試験等での試験方法の日本語での一般的表現は;

         化合物〜を、動物種〜に、投与期間〜間投与した暴露させた)。

         動物種〜に、化合物〜を、投与期間〜間投与した暴露させた)。

         動物種〜に、投与期間〜間、化合物〜を投与した暴露させた)。

    というようになります。

    これらの習慣を考慮して最初の英文を和訳すると以下の様に表現されます。

    MacNerman (19xx)は、1群雌雄各8匹のSprague-Dawleyラット0〜11ppm (0-11 mg/L)
    の六価クロム(K2CrO4として)飲料水に添加して1年暴露させた

    同様に、日本語のオリジナル表現の例を以下に示します。

          雌雄各1頭のビーグル犬25、50、100、240、500及び1000mg/kgのゲフィニチブ漸増強制経口投与した。(イレッサ毒性試験報告書より)

           メトキシメタノールの12,60および300mg/kgSD系ラットの雌雄交配前14日間および交配を経て雄は計44日,雌は妊娠,分娩を経て哺育3日までの計41〜47日経口投与し,反復役与毒性および生殖発生毒性について検討した。(メトキシメタノールの毒性報告書より)

    翻訳上のその他の留意点は、①英文は受動態が多いですが、日本文は必ず「能動態」で表現する、②対象となる動物種は原則カタカナ(ラット、マウス、モルモットなど)で表す、さらに③性別は「漢字(雄、雌)」で表す、ということです。

    デハマタ・・・

    第11回に続く・・・